en中文 contact

00field notes / guide

医院・クリニックの承継とは(個人開設と医療法人の違い、手続きの流れ)

tl;dr 30秒で

  • 診療所に従事する医師の平均年齢は60.1歳で、60歳以上が半数を超えます(厚生労働省、2024年12月末時点)。
  • 個人開設の承継は「廃止届+開設届+保険医療機関の新規指定」が基本です。医療法人の承継は、社員・理事の交代と役員変更届が中心になります。
  • 保険医療機関の遡及指定は2026年9月1日から新しい取扱いになり、開設者の変更の形によっては3か月前の予定届出が必要です。

field notes へ →

医院・クリニックの承継は、開設者が個人か医療法人かで手続きが大きく変わります。個人開設では診療所をいったん廃止して新しく開設し、医療法人では法人はそのままに社員や理事が入れ替わります。この記事では、2026年10月時点の制度にもとづいて、承継の形と手続きの流れ、現場で引き継ぐべきことを整理します。

updated 2026.10.05 · written by ai from primary sources · 出典はページの末尾に

01background

後継者不足と医師の高齢化

厚生労働省の「令和6(2024)年医師・歯科医師・薬剤師統計」によると、診療所に従事する医師は111,699人で、平均年齢は60.1歳です。病院(医育機関附属の病院を除く)の47.9歳と比べると、12歳ほど高くなっています。

年齢階級別では、診療所の医師のうち60〜69歳が28.5%、70歳以上が23.8%を占めます。あわせて半数を超える医師が60歳以上です。診療所の平均年齢は前回調査から下がりましたが、高い水準にあることは変わりません。

開業医が引退を考えるとき、診療所を閉じるか、誰かに引き継ぐかを選ぶことになります。承継は、地域の患者さんの通院先と、スタッフの職場を残す方法の一つです。

施設の種別医師数平均年齢60歳以上の割合
診療所111,699人60.1歳52.3%
病院(医育機関附属を除く)161,113人47.9歳24.0%

02types

承継の形:親族内承継と第三者承継

承継の形は、大きく親族内承継と第三者承継に分かれます。親族内承継は、子どもなど医師である親族に引き継ぐ形です。第三者承継は、勤務医や外部の医師、ほかの医療法人に引き継ぐ形で、一般にはM&Aと呼ばれることもあります。

どちらの形でも、手続きの骨格を決めるのは「開設者が個人か、医療法人か」です。個人開設の診療所は、開設者その人に許可や指定がひもづいています。医療法人の診療所は、法人が開設者なので、法人を残したまま経営する人が入れ替わります。

項目個人開設の診療所医療法人の診療所
承継の考え方旧診療所を廃止し、新しい開設者が開設する法人はそのまま。社員・理事(理事長)が交代する
保健所廃止届と開設届管理者などに変更があれば変更の届出
保険医療機関の指定新しく指定を受ける(条件により遡及指定)開設者が変わらないため指定は続く
都道府県原則として手続きなし役員変更届、登記の届出など
主な論点指定の空白期間、診療録の引き継ぎ出資持分の有無、社員構成

03individual

個人開設の診療所の承継:廃止届・開設届と保険医療機関の指定

医療法では、医師が診療所を開設したときは開設後10日以内に(医療法第8条)、診療所を廃止したときは10日以内に(同第9条)届け出ることになっています。東京都の特別区や保健所設置市では、届出先は区や市の保健所です。個人開設の承継では、旧開設者が廃止届を、新しい開設者が開設届を出します。

保険診療を続けるには、新しい開設者が地方厚生局で保険医療機関の指定を受け直す必要があります。指定は、申請者の希望がない限り毎月1日付けで行われ、申請の締切日は厚生局の事務所ごとに決まっています。申請には保健所に出した開設届の副本などを添えます。

通常どおり指定を待つと、廃止から新しい指定までの間は保険診療ができません。この空白を防ぐ仕組みが遡及指定です。関東信越厚生局などは、2026年9月1日から、厚生労働省の通知(令和8年6月5日保医発0605第2号)にもとづく新しい取扱いを始めています。遡及指定は次の3つの類型に分かれます。

  • 類型1:開設者の死亡・病気等で、血族その他勤務する保険医等が職員と診療録を引き継ぎ、緊急に申請する場合(個人開設に限る)。
  • 類型2:所在地を変えずに開設者だけが変わる場合などで、一定の要件を満たすもの。診療所の開設者変更は「個人から、血族その他勤務する保険医等の個人へ」「個人から、その個人が理事長となる法人へ」「法人から、その理事長個人へ」に限られます。
  • 類型3:上記に当たらない場合(所在地移転と開設者変更を同時に行う場合など)。原則として希望日の3か月前までに予定届出書を出し、事前相談を受けます。
  • 類型2の主な要件:診療録の引き継ぎ、旧診療所の患者さんの問い合わせへの対応、外来・在宅患者さんの診療継続、主な標榜診療科の継続。所在地を変えず開設者だけが変わる場合は、原則として開設者を除く全職員の継続雇用も求められます。

04corporation

医療法人の承継:社員・理事の交代と出資持分

医療法人の診療所では、開設者である法人は変わりません。そのため、保険医療機関の指定もそのまま続きます。承継の中心は、法人の意思決定をする社員と、経営を担う理事の交代です。社団たる医療法人の役員は社員総会の決議で選びます(医療法第46条の5)。理事長は、原則として医師または歯科医師である理事から選びます(同第46条の6)。

役員が変わったときは、都道府県知事に役員変更届を出します。東京都では、理事長が変わる場合に医師(歯科医師)免許証の写しの添付を求めています。理事長の変更は登記事項でもあるため、登記をしたあとに登記の届出も必要です。院長(管理者)が交代する場合は、保健所と地方厚生局への変更の届出もあわせて行います。

医療法人の承継で大きな論点になるのが出資持分です。持分あり医療法人では、社員が退社したときや亡くなったときに、出資額に応じた払戻しを求められることがあります。医療法人は剰余金の配当が禁じられているため(医療法第54条)、内部に資金が残りやすく、持分の評価額が大きくなりやすい点に注意が必要です。2006年の医療法改正以降、持分あり医療法人の新規設立は認められていません。それでも、2025年3月末時点で医療法人社団の約6割は持分ありの法人です。

持分なし医療法人に移る方法の一つが、認定医療法人制度です。移行計画をつくり、厚生労働大臣の認定を受けると、税制上の支援を受けられます。認定を受けられる期限は、2026年10月時点で2029年(令和11年)12月31日です。移行の期限は、認定日から5年以内で定めます。

  • 出資者の相続人にかかる相続税:移行計画の期間満了まで納税が猶予され、持分をすべて放棄すれば猶予税額が免除されます。
  • 出資者間のみなし贈与税:持分の放棄で他の出資者の持分が増えた場合の贈与税も、同様に猶予・免除の対象です。
  • 医療法人へのみなし贈与税:認定医療法人では、持分の放棄で法人が受けた利益に贈与税は課されません。
  • 移行完了から6年を経過するまで、運営状況の報告と要件の維持が求められます。税の扱いは個別の事情で変わるため、税理士や所管の窓口への確認が欠かせません。

05procedures

行政の手続き:保健所・地方厚生局・都道府県

承継の手続きは、提出先が複数に分かれます。順番を誤ると保険診療の空白につながるため、全体の流れを先に押さえておくことが大切です。東京都内の診療所を例に、主な提出先を整理します。

提出先個人開設の承継医療法人の承継
保健所(特別区・保健所設置市)旧開設者の廃止届、新開設者の開設届管理者などの変更の届出
地方厚生局(東京都は関東信越厚生局東京事務所)旧医療機関の廃止の届出、新規指定の申請(遡及指定の申請を含む)管理者などの届出事項の変更の届出
都道府県(東京都保健医療局)—役員変更届、登記の届出
法務局—理事長の変更登記

06handover

患者さん・スタッフへの引き継ぎ

承継で最も気を配りたいのは、通院中の患者さんが戸惑わないことです。院長が変わる時期、診療時間や診療科の変更の有無、予約や処方の扱いを、院内掲示やホームページで早めに知らせます。

診療録は、診療所の管理者が5年間保存する義務があります(医師法第24条)。個人開設の承継では旧診療所が廃止されるため、診療録をどう引き継ぎ、誰が保存するかを事前に決めておきます。遡及指定の要件でも、診療録の引き継ぎと、旧診療所の患者さんの問い合わせへの対応が求められています。

スタッフにとっては、雇用条件が続くかどうかが一番の関心事です。個人開設の承継では、雇用主が旧開設者から新しい開設者に変わります。説明の場を設け、契約や社会保険の手続きを丁寧に進めます。

07systems

予約・レセコン・電子カルテの切り替え

承継では、院内のシステムも見直しの対象になります。とくにレセプトコンピュータ(レセコン)は、保険医療機関コードや開設者の情報とつながっています。個人開設の承継で新しい指定を受けたら、開設者や医療機関の情報を指定の内容にあわせて設定し直し、請求の切り替えに備えます。

電子カルテは、過去の診療録をそのまま参照できる状態で引き継ぐことが大切です。システムを入れ替えるときは、データの移行範囲と、旧システムのデータを保存期間中どう参照するかを決めておきます。

予約や問診の仕組みは、患者さんが最初に触れる部分です。予約ページの名称や連絡先、通知メッセージの文面を承継日に合わせて更新します。切り替えの日程は、保険医療機関の指定日や月初の請求のタイミングとそろえて計画すると、現場の負担を抑えられます。

08premed

運営の現場から

KAIZENグループでは、2025年1月以降に医療法人の承継が2件ありました。承継のあとも、医療法人の経営は医療法人と医師が担い、本部は業務と仕組みを支えるという立場で関わっています。

旗の台のクリニックでは、承継から約3か月で予約・問診の仕組みとレセコンが本格稼働しました。手続きの期限と、患者さんに見える部分の切り替えを同じ工程表で管理すると、承継直後の混乱を小さくできると感じています。

09faq

よくある質問

  1. 01

    医院の承継で、保険診療が止まる期間はありますか?

    個人開設の承継では、新しい開設者が保険医療機関の指定を受け直すため、通常の手続きでは空白期間が生じます。一定の要件を満たせば遡及指定により空白を防げます。2026年9月1日からは3つの類型で扱われ、類型3に当たる場合は原則として希望日の3か月前までに予定届出書を出します。医療法人の承継では開設者が変わらないため、指定は続きます。

  2. 02

    親族ではない医師に個人開設の診療所を引き継ぐ場合も、遡及指定は使えますか?

    所在地を変えずに開設者だけが変わる場合の類型2は、診療所では「血族その他勤務する保険医等の個人への変更」などに限られます。それに当たらない場合は類型3として、予定届出書の提出と事前相談を経て、遡及指定の可否が判断されます。早めに管轄の地方厚生局に相談することをおすすめします。

  3. 03

    医療法人を承継すると、出資持分はどうなりますか?

    持分あり医療法人では、出資者が退社や死亡をしたときに払戻請求や相続税の問題が生じることがあります。持分なし医療法人への移行を考える場合、認定医療法人制度を使うと相続税・贈与税の猶予・免除などの支援を受けられます。認定の期限は2029年12月31日です。

  4. 04

    医療法人の理事長は医師でなければなりませんか?

    医療法では、理事長は原則として医師または歯科医師である理事から選ぶと定めています。都道府県知事の認可を受けた場合は、医師または歯科医師でない理事から選ぶこともできます。

10sources

出典

  1. 令和6(2024)年医師・歯科医師・薬剤師統計の概況厚生労働省 · 2025-12-23
  2. 医療法(昭和23年法律第205号)e-Gov法令検索(デジタル庁) · 2026-10-05閲覧
  3. 医師法(昭和23年法律第201号)e-Gov法令検索(デジタル庁) · 2026-10-05閲覧
  4. 保険医療機関等の遡及指定及び機能移転の取扱いについて関東信越厚生局 · 2026-08-03
  5. 保険医療機関等の遡及指定及び機能移転の取扱いについて(令和8年6月5日保医発0605第2号)抜粋関東信越厚生局 · 2026-08-03
  6. 保険医療機関・保険薬局の指定申請手続きの流れ及び添付書類等関東信越厚生局 · 2026-08-03
  7. 持分の定めのない医療法人への移行計画の認定申請について厚生労働省 · 2026-09-15
  8. 「持分なし医療法人」への移行に関する手引書(令和8年3月改訂)厚生労働省医政局 · 2026-03
  9. 令和8年度税制改正要望事項(医業継続に係る相続税・贈与税の納税猶予等の特例措置の延長)財務省(厚生労働省提出資料) · 2025
  10. 医療法人役員変更届東京都保健医療局 · 2026-10-05閲覧

この解説は、公的機関などが公表した資料をもとにAIが書いた一般的な情報です(時点はページの冒頭に記載)。制度は改定されることがあります。個別の判断は、最新の公表資料や所管の窓口でお確かめください。

事業 → テクノロジー →