00field notes / guide
病院の経営はいまどうなっているか(赤字・債務超過・倒産の統計から)
tl;dr 30秒で
- 病院の医業収支は2024年度に悪化しました。医業赤字の病院は病院団体の調査で74.6%、厚労省の調査で67.2%です。補助金などを含む経常収支でも、6割前後の病院が赤字です。
- 帝国データバンクの集計では、2024年度に民間病院の13.6%が債務超過でした。2025年の医療機関の倒産は66件(うち病院13件)で、95.5%が破産、民事再生は3件でした。
- 2026年度改定は本体+3.09%(2026年度+2.41%、2027年度+3.77%)で、賃上げと物価への対応が中心です。2026年9月の調査では一般病院の収支の見方が改善しましたが、人件費の上昇は続いています。
2024年度は、病院団体の調査で74.6%、厚生労働省の医療経済実態調査で67.2%の病院が医業赤字でした。民間病院の13.6%が債務超過となり、2025年の医療機関の倒産は66件と過去最多です。2026年6月に本体+3.09%(2年度平均)の診療報酬改定が施行され、収益の改善を見込む病院が増えていますが、通年の結果はまだ出ていません。
01deficit
病院の赤字はどのくらいか(2024年度)
病院の収支は、本業の診療で得る「医業利益」と、補助金や受取利息なども含めた「経常利益」で見ます。医業利益が赤字でも、補助金などで経常利益が黒字になる病院もあります。
日本病院会など4団体の「2025年度病院経営定期調査」(2025年11月公表、年度比較は1,498病院)では、2024年度に医業利益が赤字の病院が74.6%でした。2023年度の70.8%から3.8ポイント増えています。経常利益の赤字は52.1%から65.0%へ12.9ポイント増えました。新型コロナ関連の補助金が減ったことが、経常収支の悪化に表れています。
厚生労働省の第25回医療経済実態調査(2025年11月公表)でも傾向は同じです。2024年度に医業利益が赤字の病院は67.2%、経常利益が赤字の病院は58.0%でした(914病院)。一般病院の平均の損益差額率は▲7.3%で、医療法人は▲1.0%、公立病院は▲18.5%と、開設者によって差があります。
調査ごとに対象や集計の方法が違うため、数字はそろいません。ただ、どの調査でも、医業収支が赤字の病院が半数を大きく超えています。
| 調査(公表時期) | 対象 | 医業赤字の割合 | 経常赤字の割合 |
|---|---|---|---|
| 病院経営定期調査(2025年11月) | 会員病院 1,498 | 74.6%(前年度70.8%) | 65.0%(前年度52.1%) |
| 医療経済実態調査(2025年11月) | 病院 914 | 67.2%(前年度66.2%) | 58.0%(前年度49.0%) |
| 全国病院経営動向調査(2025年12月) | 民間病院 約900法人 | 61.0%(営業赤字、前年度54.8%) | ― |
02insolvency
債務超過の病院は増えている
債務超過は、負債の合計が資産の合計を上回り、純資産がマイナスになった状態です。赤字が続くと純資産が減り、やがて債務超過になります。債務超過になると、新しい借入れや返済条件の相談が難しくなりやすいです。
帝国データバンクの「全国病院経営動向調査(2024年度)」(2025年12月公表)では、民間病院約900法人のうち13.6%が債務超過でした。前年度の9.9%から3.7ポイント増えています。本業の損益を示す営業損益が赤字の法人は61.0%で、同社は過去20年で最も高い水準としています。平均の営業利益率は▲1.76%(前年度▲1.07%)でした。
03bankruptcy
倒産と休廃業の件数
帝国データバンクは、負債1,000万円以上で法的整理に入った病院・診療所・歯科医院の経営事業者を「倒産」として数えています。件数は事業者の数で、施設の数ではありません。
2025年の医療機関の倒産は66件で、2024年の64件を上回り過去最多でした。内訳は病院13件、診療所28件、歯科医院25件です。病院の13件は2000年以降で2番目に多い水準で、負債総額は医療機関全体で242億1,900万円でした。主な原因は「収入の減少」が48件(72.7%)です。
倒産に数えられない休業・廃業・解散は、2025年に823件と過去最多でした。うち病院は15件です。診療所が661件と大半を占め、経営者の高齢化と後継者不足が大きな要因とされています。
2026年上半期(1〜6月)の倒産は39件で、上半期として過去最多でした。ただし病院は4件で、前年同期の9件より減りました。件数を押し上げたのは小規模な診療所です。
| 年 | 倒産(医療機関計) | うち病院 | 休廃業・解散(計) | うち病院 |
|---|---|---|---|---|
| 2022年 | 41件 | 5件 | 528件 | 18件 |
| 2023年 | 41件 | 3件 | 620件 | 18件 |
| 2024年 | 64件 | 6件 | 723件 | 17件 |
| 2025年 | 66件 | 13件 | 823件 | 15件 |
| 2026年1〜6月 | 39件 | 4件 | ― | ― |
04procedure
倒産の中身:ほとんどが破産
法的整理には、事業をやめて資産を分ける「清算型」の破産と、事業を続けながら債務を整理する「再建型」の民事再生などがあります。医療機関の倒産は、ほとんどが破産です。
2025年の66件のうち、破産は63件(95.5%)、民事再生は3件(病院・診療所・歯科医院が各1件)でした。2024年は64件のうち破産が62件(96.9%)、民事再生が2件で、2件とも病院でした。2026年上半期も39件のうち37件(94.9%)が破産です。
再建型の手続きが年に2〜3件にとどまるのは、裁判所に申し立てる時点で資金繰りが尽き、事業を続ける力が残っていない例が多いことを示していると考えられます。地域の医療を続けるには、法的整理に至る前に手を打てるかどうかが分かれ目になります。
05background
背景:物価、人件費、診療報酬
病院の収入の大半は、国が決める診療報酬です。物価や賃金が上がっても、病院が自分で料金を上げて費用の増加分を補うことはできません。改定は原則2年に1度のため、その間の費用の上昇は病院が負担することになります。
4団体の調査では、2024年度の医業収益が前年度比+2.8%だったのに対し、医業費用は+3.5%増えました。収益は増えても利益が減る「増収減益」です。2025年度は回答した病院の賃上げ率の中央値が3.0%で、他の産業と人材を取り合うなかで人件費は上がり続けています。
帝国データバンクは、医療機器や保守費用、給食の食材費、光熱費の上昇、人材採用費の増加、医師の働き方改革への対応を挙げ、診療報酬の改定が費用の上昇に連動してこなかったと指摘しています。患者数の伸び悩みや、建て替えの時期を迎えた病棟の多さも、経営を圧迫しています。
06revision2026
2026年度診療報酬改定の影響の見込み
2026年度改定は2025年12月24日の大臣折衝で決まり、2026年6月に施行されました。診療報酬本体は2026年度と2027年度の平均で+3.09%(2026年度+2.41%、2027年度+3.77%)です。薬価等は▲0.87%です。本体が3%を超えるのは30年ぶりです。
厚生労働省の資料では、物価上昇への対応分(+0.62%)のうち+0.49%、経営環境の悪化を踏まえた緊急対応分(+0.44%)のうち+0.40%が病院に配分されます。実際の物価や経済が見通しから大きく外れた場合は、2027年度予算で追加の調整を行うとされています。
改定後の変化は、まず速報的な調査に表れています。福祉医療機構の「病院経営動向調査(2026年9月)」では、一般病院の医業収支(黒字・赤字)の指数が▲2となり、6月の▲38から36ポイント上がりました。2026年度上半期に医業利益が5%以上増える見込みの病院は35.7%、5%以上減る見込みは23.9%です。一方で、経営上の課題に「人件費の増加」を挙げた一般病院は73.2%でした。
改定の上乗せ分の多くは賃上げと物価への対応に充てる前提のため、費用の上昇が続けば利益は大きくは残りません。2025年度の通年の結果は、病院団体の2026年度調査などで今後示される予定です。改定の効果は、こうした通年の数字が出てから判断する必要があります。
- 賃上げ分:+1.70%(2026年度+1.23%、2027年度+2.18%)
- 物価対応分:+0.76%(うち2026年度以降の物価上昇への対応+0.62%)
- 食費・光熱水費分:+0.09%
- 2024年度改定以降の経営環境の悪化を踏まえた緊急対応分:+0.44%
- 後発医薬品・在宅医療などの適正化:▲0.15%
07premed
運営の現場から
医療施設の運営を支える立場から見ると、統計の数字の裏には、毎月の患者数、病床の稼働、人員の配置、委託費や材料費といった具体的な項目があります。赤字の原因は施設ごとに違い、改定の追い風だけで収支が戻るとは限りません。どの項目がいくら計画からずれているかを、毎月同じ形で確かめることが出発点です。
倒産の95%前後が破産である現状は、裁判所の手続きに入った時点では立て直す余地がほとんど残っていないことを示しています。資金に余力があるうちに再建計画を作り、現場の業務に落として実行する担い手が要ります。経営者と金融機関、現場の職員が同じ数字を見ながら早めに手を打つことが、地域の医療を続けることにつながると考えています。
08faq
よくある質問
- 01
病院の何割が赤字ですか。
2024年度は、医業利益で見ると約7割です。日本病院会など4団体の調査では74.6%、厚生労働省の医療経済実態調査では67.2%の病院が医業赤字でした。補助金などを含む経常利益では、それぞれ65.0%と58.0%が赤字です。
- 02
病院の倒産は増えていますか。
医療機関全体の倒産は、2024年の64件、2025年の66件と2年続けて過去最多です(帝国データバンク調べ)。病院は2025年に13件で、2000年以降で2番目に多い水準でした。2026年上半期の病院の倒産は4件で、前年同期の9件より減っています。
- 03
医業赤字と経常赤字はどう違いますか。
医業利益は、診療による収益から人件費や材料費などの医業費用を引いたものです。経常利益は、これに補助金や受取利息などの医業外収益と、支払利息などの医業外費用を加減したものです。新型コロナ関連の補助金が減ったため、2024年度は経常赤字の病院が大きく増えました。
- 04
2026年度の診療報酬改定で病院の経営はよくなりますか。
本体+3.09%(2年度平均)は30年ぶりの大きな引き上げで、2026年9月の福祉医療機構の調査では一般病院の収支の見方が改善しました。ただ、上乗せ分の多くは賃上げと物価への対応に充てる前提で、人件費の上昇も続いています。通年の効果は、今後公表される調査で確かめる必要があります。
09sources
出典
- 2025年度 病院経営定期調査 概要版(集計結果)日本病院会・全日本病院協会・日本医療法人協会・日本精神科病院協会 · 2025年11月26日
- 第25回医療経済実態調査(医療機関等調査)報告(令和7年11月26日公表)の概要厚生労働省(中央社会保険医療協議会) · 2025年11月26日
- 第25回医療経済実態調査の分析厚生労働省保険局医療課 · 2025年11月26日
- 全国「病院経営」動向調査(2024年度)帝国データバンク · 2025年12月4日
- 医療機関の倒産・休廃業解散動向調査(2025年)帝国データバンク · 2026年1月23日
- 医療機関の倒産・休廃業解散動向調査(2024年)帝国データバンク · 2025年1月22日
- 医療機関の倒産動向調査(2026年上半期)帝国データバンク · 2026年7月13日
- 診療報酬改定について(令和8年度、12月24日の予算大臣折衝を踏まえて)厚生労働省 · 2025年12月24日
- 令和8年度診療報酬改定について厚生労働省 · 2026年10月5日閲覧
- 病院経営動向調査(2026年9月)の結果について独立行政法人福祉医療機構 · 2026年10月2日
- 2024年度 病院の経営状況に関するリサーチレポートについて独立行政法人福祉医療機構 · 2026年3月4日
この解説は、公的機関などが公表した資料をもとにAIが書いた一般的な情報です(時点はページの冒頭に記載)。制度は改定されることがあります。個別の判断は、最新の公表資料や所管の窓口でお確かめください。
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